愛着形成は子どもの人生に影響する、心の発達に重要な愛着とは

抱っこする母子 愛着

「愛着」という言葉を聞いたことはありますか?

「使っているうちに、だんだん愛着がわいてきた」「この物には、とても愛着を持っている」などという言い方をしますよね。

子どもの発達について考えるときや、心理学の分野でも、愛着という言葉を使うんですよ。

しかも私たち人間にとってこの愛着は、とても重要な意味を持っています。

子育てママはぜひおさえておきたい、子どもの人生をも左右する、大切な愛着についてお伝えします!

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子どもの発達や心理学でいう愛着とは

抱っこする母子

愛着は特定の人に対してできる、情緒的な心の結びつきや絆のことです。

主に乳幼児期に、親子でつくられる情緒的な絆のことを愛着と言います。

この心の結びつきが、十分につくられないと、その後いろいろな問題を抱えることになってしまいます。

子どもの時だけではなくて、大人になってからも、人生の中で大きな影響が出てくることになってしまうんですよ。

赤ちゃんが愛着関係を築くのは、多くの場合はお母さんです。

でもお母さんがいろんな理由でそばにはいなかったり、お母さん以外の人が毎日のお世話をしている場合などは、お母さん以外の人との間に愛着関係が築かれることもあります。

愛着は、日常生活の中でお母さんと関わっていく中で、時間をかけて少しずつつくられていくものです。

愛着はどうやってできるの?

赤ちゃん

私たち人間は、生まれた時には自分では何もできませんよね。

野生動物とは違って、すぐに立ち上がることもできませんし、オムツを替えることも、ミルクを飲むこともできません。

誰かお世話をしてくれる人がいなければ、生きてはいけません。

人間は未熟な状態で生まれてくることで、誰かと密接に関わりながら成長するようになっています。

多くの場合、赤ちゃんはお母さんにお世話をしてもらいます。

しゃべれなくても声を出したり、手足を動かしたり、泣いたりぐずったりすることで、自分の感情を表現してお母さんの注意を引き、お世話をしてもらいます。

お母さんは、赤ちゃんの気持ちよさそうな表情や、かわいらしい姿を見て、母性を刺激されて少しずつお母さんとしての自覚も育っていきます。

初めは誰がお世話をしても、赤ちゃんの反応にあまり差は感じられませんが、成長していくとだんだんお母さんを求めるようになっていきます。

ハイハイする赤ちゃん

お母さんを追いかけて後追いをしたり、抱っこをしてほしがったり、人見知りも出てきます。

後追いされて、1人でゆっくりとトイレにも入れないというママも、多くなりますよね。

でもそれは、赤ちゃんとお母さんとの間に愛着形成されている時期だから、見られる行動なんですよ。

子どもは困ったときには「愛着の対象の、お母さんのところに戻れば安心できる」ということを、分かっています。

ママの姿が見えなくて不安になると、ママのところに行けば安心できると思って、一生懸命に後追いしているんですね。

愛着関係がしっかりと形成された子どもにとっては、お母さんの存在が、安全基地の役割になっています。

成長してその時期を過ぎると、お母さんの姿が見えなくても、お母さんは戻ってくると分かって、待っていられるようになっていきます。

毎日のお世話や生活の中で、子どもはお母さんの注意を引きながら、スキンシップなど愛情のこもった関わりをたくさんしてもらうことで、愛着関係は少しずつ時間をかけてつくられていきます。

愛着形成には期限がある

時計

愛着づくりには、乳幼児期に、ママとのスキンシップや向けられる優しい表情、声かけなどが、密接にされて、お互いのやりとりが継続的に行われる必要があります。

「臨界期」という考え方があって、それを獲得するのには適した時期というものがあります。

愛着形成の臨界期は、大体1歳半くらいまでが大切な時期と考えられています。

1歳半くらいまで、お母さんが深い関わりを持つことで、安定した愛着の形成がされやすくなります。

反対に、この臨界期を過ぎてしまうと、愛着づくりはスムーズにいかなくなってしまいます。

臨界期を過ぎてから、愛着形成をしようと思って頑張っても、難しくなってしまうんですね。

また、臨界期に愛着形成する相手から離されたり、養育する人が代わってしまったりしても、影響が出てくることがあります。

温かさやスキンシップが大切

愛着がスムーズに形成させるためには、十分なスキンシップや肌の触れ合いが大切です。

昔、外国で学者が、愛着の大切さを検証しようとした、アカゲザルの有名な愛着実験があります。

アカゲザル

生まれたばかりのアカゲザルの赤ちゃんを、お母さんのサルから離して、代理母で育てる実験をしました。

代理母の1つは、哺乳瓶がとりつけられている、針金でできた感触の冷たい針金のお母さんです。

もう1つは、針金が柔らかい布で覆われて、ヒーターで体温近くまで温められた布のお母さんです。

それまでの心理学では、子どもは栄養をくれる、哺乳瓶がつけられたお母さんに愛着を示すと考えられてきました。

でも実験をしてみると、アカゲザルの赤ちゃんは、明らかに布のお母さんを好んでいました。

もちろん、おなかがすくと針金のお母さんからミルクを飲むのですが、すぐに布のお母さんへ戻ります。

音でびっくりするようなときにも、小ザルは怖がって、布のお母さんにしがみつきました。

この実験から、愛着は食べ物を与えられるから生まれるのではなくて、お母さんの温かいスキンシップによって形成されるのだと考えられました。

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スキンシップによって、安心感をもつことができたアカゲザルの子どもは、初めてのものを探索することにも、チャレンジするようになっていきました。

人間の子どもも、愛着形成ができて、お母さんという安心安全な場所があると、不安になったらお母さんのところに戻りながらも、少しずつ新しいことにもチャレンジしていけるようになります。

でもこのアカゲザルは、生きた母ザルに育てられたわけではないので、成長とともに自分を傷つけたり、仲間とうまくつきあえず、関係を持つのが難しいといった、いろいろな問題が出てきました。

これも人間の場合も同じで、家庭環境や養育者の関わり方によって、愛着形成が十分にされなかった子どもは、その後の人生の中でいろいろな問題を抱えるようになっていきます。

愛着形成されないとどうなる?

両手で顔を隠す少女

愛着がスムーズに形成させるために大事なことは、十分なスキンシップや肌の触れ合いと、子どもが求めた時にそれに対して応えられることです。

子どもは、いつもそばで見守ってくれて、助けてくれる人に対して、特別な結びつきを持つようになります。

求めたら応えてくれるという安全や安心を感じられる関係の中で、愛着関係はつくられていきます。

もし、愛着形成が十分にされないと、どうなるのでしょうか?

家庭環境や養育者の関わり方によっては、子どもが愛着を感じる人を見つけられなかったり、安全基地がないために、危険や不安を感じたときの対処法が分からなくなったりすることがあります。

それに、自分の命と安全を守ることができる安全基地の役割がどこにもないので、チャレンジできることが少なくなったり、ストレスがたまりやすくなったりします。

愛着障害

「愛着障害」という言葉を聞いたことはありますか?

愛着障害は、乳幼児期に特定の人との愛着関係が作られなかったことによって起こる障害のことです。

愛着障害のある子供は、感情のコントロールができず、衝動を抑えられずに行動してしまうことがあります。

周りの刺激に過敏だったり、反抗的な態度や破壊的な行動が見られる傾向があります。

また、自尊心が低く、自己肯定感や自分を大切にしようとする気持ちが低くて、自分に対してネガティブな認識を持っています。

相手の立場に立って考えたり、他人と情緒的な交流をしたりするのも苦手です。

愛着障害は、人によって表れる行動が違いますが、主に2つに分けられます。

1つは、人との関わりを必要以上に警戒したり抑制して、人間関係がうまくいきにくい抑制型です。

もう1つは、適切に特定の人と情緒的で親密な関係を築くことができずに、誰にでもベタベタと甘えてしまう、脱抑制型です。

愛着障害のある子どもは、万引きをしたり暴力などの非行、自分を傷つける行為、学校不適応など日常生活でたくさんの問題を抱えやすくなる傾向があります。

1歳半くらいまでの臨界期に、愛着が十分に安定して作られていれば、このような愛着障害による問題行動も、防いでいくことができますね。

また、ホスピタリズム(施設症候群)では、乳児院で育った子どもの死亡率が高くて、心身ともに発達の遅れが目立ち、性格的な歪みが後々まで残ると言われています。

乳児院などの施設では、特定の決まった養育者がお世話をすることは難しいので、何人もの養育者が交代してお世話をしていたりします。

特定の養育者からお世話をされたり、愛情を受けることができなかった乳児の約3割が、免疫力の低下や感染症によって亡くなったというデータもあり、大切な時期に愛着形成ができないことは、赤ちゃんの命にも関わると言われています。

それほど、愛着形成というものは、子どもの心身の健康や健やかな発達において、とても重要だということですね。

大人になっても影響する愛着障害

頭を抱える女性

先ほどお伝えした、抑制型の愛着障害があると、人との基本的な信頼感が育っていないので、人との関わりを必要以上に恐がったり、抑制するようになります。

だから、何かつらいことがあっても、人に頼るということができません。

反対に、脱抑制型の愛着障害では、誰に対しても甘えたり、状況に合わない、なれなれしい言動をとってしまうことがあります。

また、見捨てられることへの不安から、行き過ぎた行動をするなど、人との適切な距離感が保てずに苦しむこともあります。

社会生活の中で、人との対人関係をうまく築くことが難しくなってしまうんですね。

愛着障害は小さい子どもにつく診断名なので、大人になってから診断されることはほとんどありません。

大人の場合は、社交不安障害やパーソナリティ障害(人格障害)などの診断を受けることがあります。

それにストレスを感じやすく、人に頼ったり助けを求めることも苦手なので、症状によっては心身症やうつ病と診断されることもあります。

でもそれらは、実は小さい頃の愛着が問題であることもあるんですよね。

愛着関係のある人との関わりの中で、十分に自分を表現したり、コミュニケーションの仕方を学ぶことができなかったために、大人になってからも人とのコミュニケーション能力が低くなってしまいます。

また、お母さんとの愛着形成をしっかり行えないと、親になった時に、自分の子どもとの愛着形成も行えずに虐待してしまうなど、次の世代へと連鎖してしまう場合もあります。

一言で「小さい頃の親との愛着関係」と言っても、実はその子どもの人生や、その次の世代までも影響してしまう可能性もある、とてつもなく重要なものなのです。

まとめ

愛着は特定の人との情緒的な結びつきのことで、愛着が十分に形成されているかどうかで、その後の人生にも大きく影響していきます。

乳幼児期の心の発達には、愛着の形成が大前提で、大切な基礎になる部分です。

自分以外の人に対する基本的な信頼感が持てるようになり、その後の心の発達、人間関係、社会性の発達に大きく影響します。

自分は愛されて守られているということを、赤ちゃんの頃から、さらに言うならば、お腹の中にいる胎児の頃から、繰り返し伝えていきましょう。

それが子どものその後の人生の、大切な基礎を支えていきます。

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れっきー

子育てライフアドバイザーとして個別相談や情報発信を行ったり、宮城県で子育てサロン「ピヨピヨサロン」を運営しています。

保育士として、19年の公立保育所の勤務経験があります。

自分の子育てには、保育士経験だけでなく、心理学やスピリチュアルの学びも取り入れています。

わがやの子育てについての考え方や実践を、ぜひ参考にしてみてくださいね☆

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